―――此処は玉座にして祭壇。
以下略。

単刀直入に話すと、
我等が世紀の大天才はまたもや責任を問われることになっていた。

「だから、未完成のまま行くのには反対したのである!」
「見苦しいッ! いいかげん、自分の非を認めたらどうなのかね……」
必要以上にウェストを責める褐色の男。
彼の名はアウグストゥス。
ブラックロッジが大幹部「アンチクロス」が一。

もはや彼に食ってかかるドクターの姿は日常茶飯事。
そして―――

「もうよい」
この一言で場を黙らせる、一見この場に不相応な青年の姿も。

マスターテリオン。
彼こそが、ブラックロッジを統べる「魔人」。
その強さは、常人が理解できる範囲を
軽く髪先一本ですら凌駕できるであろう。
……人間の語彙では、正確に表すことは困難だ。
「あれは余がついでで頼んだこと。必要数は既に回収してある。
 ご苦労だった、ウェスト」
こう言われて、大幹部にまで口の減らない彼が頭を下げるのは
マスターテリオン以外に誰があろう。
「お言葉ですが大導師、貴方は奴の肩を持つとでも言うのですか?
 取り逃したあれは覇道の手に渡り、現在はおそらく解析でもされているかと……」

「心配は無用だ」
言って、膝元の少女の頭を撫でるマスターテリオン。
「覇道側には優秀な操者がいない。
 今から訓練したとしても、到底来るべき時に間に合うものではない。
 よってあれが我々に対する剣になる確率は低い。
 もっとも……そうなったところで、ウェストの機械一機程の能力で関の山だが。
 此方は、ウェストに何らかな手だてがあるらしいのでな。
 それを見てからでも遅くはないだろう」
言いたいことを言い切ったのか、玉座の上に居る彼はけだるそうにしている。
意外と今回の件については饒舌だった印象。
「……仕方ない。
 だが、アル・アジフの断片回収の件では、
 こうはならないことを覚えておくがいい」
結局アウグストゥスが折れ、
ドクターは窮地を脱したのだった。

研究室に戻ったドクターは、先ずはアウグストゥスの鼻をくじくために
何やら別の研究を始めた。
前回の任務ではレーダーに不備があったことが原因の失敗だったが、
それはすぐ直して済むことと判断したらしい。
果たして、今度の来るべき時には
確実な結果を残すことができるのだろうか。

以上、ここまでの記録者は人造人間エルザ。

「自分で人造人間と書くのも、変な感じロボ」
と思いつつ、先ずはそこの煩いギターを止めにかかるエルザであった。

「うわらば!」

次へ

TOP