交差点。
安全確認は命を守る。
この時代でも必須のことだ。
右見て、左見て、前を確認。
もう一度。
右見て、左見て、前を確認。
……リピートアフタミー。
右見て、左見て、前を確認。
右見て、左見て、前を確認。
右見て、左見て、前を確認。
右見て、左見て、前を確認。
……迷った。
「こんなに入り組んでたとは知らなんだぁぁぁぁ!?」
シン・アスカ、失意体前屈。
ごめんなさいマジで迷いました。
というか、道中でそんなに叫んでいいのか。
人々からは奇異な目で見られないのか。
まあ、事実は単純。
そもそも見ている人がいない。
今のここは人の流れが極度に少ないのだろうか。
それにしても、アーカムシティにも交通量ゼロの場所があるのか。
道路幅はこんなに広いのに。
とにかく、人がいない事実がそこにある。
不自然なまでに。
「というか、本気で文句のひとつも飛んでこないのかよ」
Q:罵声ひとつ浴びせられない、正しい理由は何なのかな? かな?
A.転校した B.偶然全員出払ってる
C.皆寝てる D.また別の世界に飛ばされた
どれも有り得なそうだから、50:50で。
Q:罵声ひとつ浴びせられない、正しい理由は何なのかな? かな?
A. B.
C. D.
いや、それは100:0だから。
最早クイズじゃあない。正解はないのかよ。せめて正解率1%で頼みたい。
全部消すな。
とまあ、脳内漫才とか展開できるくらいには余裕があるみたいだが。
しかし、実質問題奇妙すぎる。
何かがおかしい。
早く帰りたくなってきた。雨も降りそうだ……今一粒落ちた。
「げ、雨足が強くなってきてる!?」
たまらず走り出す。
まだ家まで戻れないのなら、どこか雨宿りできるところはないか。
未だ分からない何かに向かい、走り出した。
おかしい。
何かがおかしい。
探し人は目の前にいた。
そこまで移動も早くはなかった。
追い付ける。
普通なら、追い付ける筈だ。だが。
走っても走っても、彼には届かず。
付きの魔導書と分断させようとしても、全く干渉できず。
一番考えやすいことは。
すでに妾が、何らかの干渉を受けていること。
自分以上の力で。
そして
確たるものは
背後に。
雨が降ってきた。
あれから、どのくらい逃げただろう。
見当もつかない。
だが、撒くことには成功したようだ。今は。
しかし、どうも雨は好きになれない。
確かに、それはあらゆるものを洗い流す。
だが、大事なものは何ひとつ流せない。
むしろ苛烈なまでに、人の心を蝕む。
あの事実だけで十分だと言うのに
周囲を見渡すと、誰もいない。
人ひとり居なかった。
静まりかえる。
あたりには、雨の音ばかり。
だが……
何か、近づいてきた。
足音が雨に紛れながら。
その存在は確かに。
この、どうしようもない孤独の世界に。
確かに在る、もうひとつの存在になるべく。
走ってきた。
「先ず、1ペア」
何処かに在る闇が、呟いた。